『津軽』の魅力についてご紹介
津軽の鉄道  弘南鉄道 〜黒石線の旅〜


弘南鉄道のもう一つの路線は、JR弘前駅構内と連結した弘南黒石線です。ここで、お得な情報を紹介します。

@弘南鉄道大鰐線で、最初に往復券(1,000円)を購入すると、「鰐com温泉」の入浴券がついてきます。
A津軽フリーパス(1,500円)を購入すると、JR・弘南鉄道・弘前市内の路線バスが2日間、フリーエリア乗り放題です。
※津軽の名所・温泉・観光施設巡りには最高です。

さて、本題に戻ります。今回この路線での旅の楽しみは、次の3つでした。
 @津軽尾上駅から歩いて10分程度の「盛美園」をめぐる
 A黒石駅からこせみ通りを歩いて「黒石つゆ焼きそば」を食べる
 B「亀吉」で有名な、こみせ通りにある「中村酒造」を訪ねる

JR弘前駅東口、城東口を一階に下りると、右横に弘南鉄道黒石線の切符売り場があります。電車は、約30分間隔で運行されています。大鰐線同様、やはり東京都内で使われた電車が走っていました。のんびりした春の日差しを受けて、津軽のリンゴ園の中を走り抜けていく感じです。津軽鉄道のストーブ列車には「走れメロス号」とありましたが、津軽平野はどこへ行ってもそんな雰囲気です。
電車の運転席にある丸型メーターは、とてもレトロな雰囲気を醸し出していました。運転席横の窓脇には、この地方を代表する「猿賀神社」の安全祈願のお札が何気なく貼られていました。

始発の弘前駅から8駅ぐらいだったと思いますが、まずは津軽尾上駅に到着しました。


@「盛美園」をめぐる

津軽尾上駅から歩いて500mメートルほどで、「盛美園」に到着しました。今回訪れたのは3月7日(日)、まだ風が冷たい日でした。次の週には、雪があまり積もらない太平洋側の八戸市で積雪61センチメートルという大雪が降った三寒四温の季節です。
「盛美園」の開園は4月1日となっていましたが、館主がわざわざ門を開けて中を見せてくれました。

 

まだ雪囲いをしていた庭園は、ひっそりした雰囲気を醸し出していました。園内の庭木も寒々と感じましたが、その上空では、鷹が滑降していました。そしてその背景には津軽平野が続き、奥には岩木山がうっすらと見え隠れしていました。
庭園の一角にそびえ立つ西洋館の建物が、日本式庭園との絶妙なコントラストを描き、とても新鮮な気持ちになりました。館主に丁寧にお礼を述べて、次は黒石駅をめざしました。 
 

A「黒石つゆ焼きそば」を食べる  B「中村酒造」を訪ねる

黒石駅に到着すると、駅前の観光案内所みたいな建物が目前の交差点近くにあり、「やきそば地図」をもらいました。そして、「こみせ通り」までの道案内もしてくれました。
人口38,000人に対して焼きそば店が70数軒、焼きそばの町、富士宮市より多いというのです。

独特の平打ち麺が特徴ということで、楽しみにしながら街中を歩いていくと、あちこちに「やきそばの町黒石」のノボリが見られます。
しかし、街中はすごく静かで、あまり人と出会いません。

途中、三階建ての消防の屯所が見えてきました。「すごい年代物」と思いきや、大正13年に建てられた(1924年)木造二階建ての屯所でした。入母屋根の装飾が近代建築となっており、全体の高さが13.68メートルということで、五階建てに匹敵する高さです。

そんな建物を見ながら数十メートル歩いて行くと「こせみ通り」がありました。黒石駅から歩いて20分もかかりませんでした。

 

まず「こみせ通り」を歩いて最初に目に入ってきたのが、「中村酒造」の看板です。古い建物とお店の入口の戸、そして入口を開けても誰も返事がないのがとても印象的でした。奥の方に向かって「こんにちは」と叫ぶと、何やらら仕事中のようです。そぞろ歩きで中に入ってみると、客間みたいな畳部屋には、中村酒造家のお雛様が畳の上に並べられていました。とてもかわいい雰囲気と伝統を感じました。また、家屋の上を見ると、天井に梁が巡らされた高い屋根にも驚きました。この日は酒の仕込みでもしていたのか、蔵の奥は活気で満ちあふれていました。

 

店の入口まで戻るとお店の人がいたので、本来は有名な「亀吉」をと思いましたが、今の季節しかないという生しぼりの純米酒「あどはだり」を購入しました。試飲もできると言われましたが、すべての種類のお酒を試飲していたら、足が千鳥足になるのを恐れ、旅の終わりに家でゆっくり口にする楽しみを残し、「こみせ通り」の散策を楽しみました。

津軽は雪が多い。弘前市も城下町ですが、昔は黒石の「こみせ通り」のように、木造のアーケードがあったのでしょう。この木造アーケードによって、庶民は城下町の商店街を、夏の日照りや冬の吹雪を心配せずに買い物をすることができます。

 

狭い路地で人と人とが交差するスペースが狭く、すれ違いざまに袖がぶつかり「すいません」などという声がでてしまうような感覚に、田舎のコミュニケーションの粋な計らいを感じました。

それから、「こみせ通り」の一角にあった「レストラン御幸」に入り、ご当地ご自慢の「黒石つゆ焼きそばセット」を注文しました。ここのつゆ焼きそばは色々な楽しみ方があって、自分で作って食べるというのが面白かったです。

 

最初に熱い石鍋で野菜と肉を炒めます、次に平打ち麺を入れてオリジナルのソースをかけます。ここで、普通の黒石やきそばが完成、味見をします。次に、そこに具を入れてスープをかけると、ジュクジュクと音を立てて「つゆ焼きそば」の完成。スープはソース味ですが、ラーメンを食べている感じで、最後はスープだけが残ります。そこに半ライスを入れて食べます。ソースライスを食べてる感じで、いったい何を食べたのか自問自答するような感じの味でした。そんな味を堪能しながら黒石をあとにしました。

津軽弁で津軽人のことを「もつけ」という言葉がありますが、「人がいい」という意味です。「何事にもチャレンジしてみる」ともとれるといいます。「黒石つゆやきそば」はそんな津軽人の「もつけの味」なのかも知れません。