その他の活動・出来事

2006年初夏の白神山地エコロジー体験ツアー


7月15日(土)〜17日(月)の2泊3日間、初夏の白神山地エコロジー体験ツアーを実施しました。今回の参加者は8名でした。奥赤石川林道を通って櫛石山付近のスギの人工林を見ながら、森林生態系保護地域の観察をして、東北のブナの生態系を観察しました。

■ 1日目 【15日】

○八甲田丸前に8時集合
点呼をとって白神自然学校を目指して出発。白神自然学校でテント・ガス・寝袋等を積み込んで、林道入り口の駐車場へ向かいました。

○林道入り口の駐車場
11時過ぎ到着、食糧等を積み込みました。30分後、小雨がパラパラ降る中をテント場に向かって歩きました。皆さん気が若いのか、足がしっかりしていて、約3時間30分でテント場に到着。

○テント場に到着
テントを張って、早めの夕食をとりました。その後、翌日の行程の打ち合わせと、来る途中の櫛石山付近のスギ林の事をみんなで語り、就寝しました。
 

■ 2日目 【16日】

○いざ、クマゲラの森へ
早めの朝食を済ませ、朝8時頃、クマゲラの森に向けて出発しました。夜露と雨の心配もあるので、全員雨合羽姿でした。心臓破りの坂を、一気に櫛石山山麓まで駆け上がります。尾根で山の雰囲気が変わります。ブナ林がどんどん広がり、参加者も「ブナ林にきたという感じがした」と、話しながら歩きます。

途中から、「森林生態系保護地域」の看板が見えました。「ここから世界遺産の核心部分ですよ」という説明に、参加者は感激。まず「(この地域で)しちゃいけないことは何ですか」という話になり、@山でのたき火A川での魚釣り、Bみだりに木を伐ったり、植物を持ってこないこと等を確認しました。

 

そうして歩くこと1時間、クマゲラの森が見えてきました。静寂できれいなブナ林の森に、参加者は自然遺産の素晴らしさ、原生的なブナの森に触れたと喜んでいました。その後、クマゲラの森の真ん中を流れている湧き水を飲みました。ブナ林の地下から湧き出す水は、冷たくて、乾いた喉に潤いを与えると共に、疲れも吹っ飛ぶ感じでした。

○山菜入りカップめん!?
参加者は、白神自然学校の目前を流れる赤石川の川原に下りました。ちょっと早いのですが、ここで昼食をとることにしました。川原のミズ(ウワバミ草)を採取して皮をむき、コンロで煮立ててカップ麺の中へ―。山菜カップ麺のできあがりです。ミズは、煮立てるととてもきれいな色になります。ここでも川に注がれる湧き水を使いました。
 
その後、川原を歩いて上流の二股近くまで歩きました。この日は、少し水量も多かったのであまり無理しませんでしたが、川原に流れ込むクマゲラの森の水が滝となって流れているきれいな場所を見て、参加者は感動していました。やっぱりここでも水をいっぱい飲みました。広葉樹の森の腐葉土の中を通った水はとてもおいくて、軟水のやわらかいおいしい水です。

  
参加者の1人が、釣り人を発見。「釣りはだめですよね、こういうマナーを守らない人もいるんだ」と残念そうにしていました。私たちが到着した15日、テント場には、品川ナンバーの車がありました。「どうして品川ナンバーなんだろう」とみんな不思議に思っていました。その辺の回答が、この日の夕方わかりました。
 

お昼間にテント場に戻ろうとした時、ブナの森の中に雨の滴が落ちてきました。参加者は、途中で雨合羽を着てテント場に戻りました。途中、霧が発生して、あちこちの山から水蒸気がでて雲がでています。遠い山は真っ白です。
ここで全員、ブナの幹に流れ落ちる雨水を、ブナの木に口をつけて吸いました。「おいしい木の香りがする水だ」「おいしい」と叫びながら、雨の日のブナ林での遊びを体験しました。腐葉土が水を吸収するために足下がスポンジ上になっていて、土がしっかりしていることに感嘆していました。途中、調査に来ている弘前大学の学生とも出会いました。15時頃、テント場に戻りました。

テント場に戻ってちょっと早めの夕食を用意しながら、近くに止めてあった「品川ナンバーの車の持ち主はどうしたかなぁ」と話していたら、釣りの恰好をした人が目前をスタスタと何にも言わず通り抜け、迎えにきていた地元の方達の車と一緒に足早に去っていきました。

参加者は、「何でここのゲートは鍵がかけられているのか」と聞いてきました。「ここが核心部分に入るには一番近いルートだから」ということや、「世界遺産になってから10年間、原則入山禁止できた」こと、「秋田県は今まだ入山禁止だが、青森県側は、届け出をすれば入山はできるが、釣りはできないこと」等を話しました。
また、私たちはきちんと森林管理署に入山届け出を提出しており、ボランティア巡視員をしていることも話しました。しかし、「注意すると、嫌な顔や威嚇された事もある」と参加者の1人は嘆いていました。
この日の夜は、各自テントのグループ同士で核心部分へ行った時の感想を思い思いに話し、遅くまで盛り上がっていました。しかし、その盛り上がりと共に、雨の量も音もすごく、雷も鳴っていました。後でわかったのですが、下界では電車の脱線や床上浸水などが起きてたんですね。

■ 3日目 【17日】

○テント場を出発
朝4時に起きて早めに食事をしました。6時、テント場を出発して林道を下りました。9時には林道出口に到着して記念撮影。

参加者は白神山地の奥深い所を歩き、「今年春から植林をしている参加者は、あのようなブナ林になるまでは、自分の代ではなく、子供や孫の代までかかるんだなぁ、と実感した」と述べていました。

○くろくまの滝は壮大
すごい水量のくろくまの滝は、滝壺まで行けない状態です。途中土砂崩れになっていましたが、「日本の滝百選」に選ばれ、白神一の高さ(85m)のくろくまの滝に感動していました。広葉樹の森を代表するように、滝は白神山地にはつきものです。

○ハロー白神でひと休み
甘い「白神まん」をレンジで温めて食べました。また、今回の行程について、ガイドマニアルを購入して地図上から確認しました。そして白神自然学校で昼食を食べ、記念撮影をしました。

途中、地元のおいしい酒、尾崎酒造の「安東水軍」を購入し、ぽっかほか温泉で山の汗を流して青森に戻りました。参加者のみなさんは、次の日「リゾート白神号」で五能線を下り、秋田市から岩手県の遠野市、そして福島県を経由して一週間休みを取ってきた人もいます。青森県立美術館で、シャガールを観て戻られた方もいます。アウガの地下で魚を買い求めた人もいます。皆さん楽しい3日間でとても良かったと思います。

また、紅葉の白神山地においで下さい。

文責: 永井 雄人