その他の活動・出来事
生物多様性国家戦略の見直しに係る
地方説明会を開催
(仙台会場参加)


4月18日(水)13時より、仙台市内にある宮城県民会館6階の会議室で、生物多様性国家戦略の見直しに係る地方説明会が開催されました。この地方説明会は、4月13日〜20日の間で、札幌・仙台・さいたま・名古屋・大阪・岡山・熊本・那覇の8会場で開催されました。

地方説明会では、昨年8月から今年3月までに計7回にわたって開催した、「生物多様性国家戦略の見直しに関する懇談会」(以下、「懇談会」)において取りまとめられた論点等について、環境省から説明するとともに、各会場4名程度の発表者からそれぞれ15分程度、意見を伺うというものでした。

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はじめに、環境省自然環境局自然環境計画課長 渡辺綱男さんから、懇談会の論点等について説明があり、その後、意見発表が行われました。

【発表者1】 秋田県産業経済労働部次長 青木 満さん
秋田エコロジカルネットワーク構想を説明し、自然公園法の改定など、前向きな見直しを発表。

【発表者2】 日本雁を保護する会 呉地 正行さん
宮城県の蕪栗沼の雁の越冬ルートなどについて、「温暖化が渡り鳥に及ぼす影響」と題して液晶を通して説明。

【発表者3】 蕪栗グリーンファーム 斉藤 肇さん
里地里山の持続における問題点と解決策に関して、画一的な国のやり方に今まで農家は従ってきたが、これからは環境保全型の農業を目指し、アイデアを出していくということ。また、そのような農家を支援すべきではないかということ。合鴨農法の話を通して、環境保全を通した生物・環境を保全していくためには、農家とのコミュニケーションが必要と発表。

【発表者3】 白神山地を守る会 永井 雄人代表理事
白神山地において、「ブナの森の復元・再生活動」と位置付け、白神山地の遺産地域の緩衝地帯より外側の周辺部のスギ林地域を伐採し、最終的には複合林として広葉樹の森にする活動をしている。全国から毎年、植樹祭や植林活動の為に訪れる。しかし、その活動はいま地に足がついたばかり。平成17年度に「地球温暖化防止環境大臣表彰」を受けたが、まだそこまで貢献していないような気がする。

この活動は、「里地・里山を守る活動」と結びついている。というのは、昭和30年代、地元の人達は、スギを植える為にこの辺まで入っており、戦後植林されたスギは、成木として伐採をしなければならない時期を迎えている。またぎや地元の人達は、山菜やツキノワグマなどを狩猟していた。しかし、このスギも、外材との価格差で購入先がほとんどなく、伐採できない状況にある。外材についても、中国の経済発展とオリンピックの為の建設ラッシュで、ロシアからの外材が日本に入ってこない為に、国産材に注目が集まっている。里山の山は、白神山地においても荒れ放題である。このままだと、いつ病気が発生するかわからない。
特に最近感じることは、
1)中国からの黄砂と酸性雨による土壌の酸性化の問題。
  ブナの葉っぱが黄色くなってきている。
2)松食い虫が発生し、深浦方面では伐採をしたが、ブナ林への影響が
    心配である。

3)日本海で、エチゼンクラゲ、最近ではハリセンボンなど、海流の上昇
  による温暖化がブナ林に与える影響が心配される。
4)国設の鳥獣保護区に指定したことにより、ツキノワグマが里山へ異常
  発生することが心配される。最近、里山のあちこちで糞や足跡を発見
  する。最近は、山の中での餌が少ない為か、ニホンザルが里山へ出没
  することが増えている。
5)里山の集落には、林業のノウハウを持った人々がまだ暮らしているが、
  「高齢化」「後継者がいない」「就労の場がない」などの理由から、
  林業が後退している。
  私たちは、本当に白神山地を守るのは、このように里山に住んでいる
  地元の人達であり、よそ者には限界があると考えている。里山に住む
  人たちの山に対する意識がなくなったら、里山は守れないと思う。
  したがって、山と関わる仕組みを検討しなければならないと考える。
  具体的には、間伐材の利用を通して、自然再生の循環的産業の復興、
  バイオマスの活用などの検討をしなければならないと考える。
6)団塊の世代や、若者の定住・移住と絡めた、集落での都会の人々との
  交流を考えていかなくてはならない。  
ということである。

ここで「新・生物多様性国家戦略」を考えると、白神山地のように100%が国有林という中では、私たちNPOだけでは活動に限界があると共に、今の林野庁の職員数と体制では無理があると考える。そこで、環境省だけではなく、林野庁、農林水産省、国土交通省、文部科学省、(経済の面からも考えなくてはならないので)経済産業省の各省庁が連携し、NPO活動をしている団体からも検討会に入って意見を述べる体制をつくるべきと考える。

また、「持続可能な開発のための教育の10年会議」があるが、地域のコミュニケーションのスタイルとして、地域資源でもある大学・事業所・市民・学校・有識者と連携していくというスタイル、それが、地球温暖化防止センターなどの活動の軸になるような形にならなければいけない。今の温暖化防止センターは、地方の場合、委託される団体も小さな団体だったり予算がない団体で、形骸化した活動しかしていない。温暖化防止センターが、このような実践の団体の掌握や実践活動に積極的に参加しない限り、国民運動的広がりがもてないと思う。

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この説明会には、東北地方環境事務所の吉井雅彦所長も参加し、東北の各団体とネットワークを組んで連携しながら、環境省の施策を進めていきたいと話していました。会場の傍聴者からも意見がたくさんでていました。

この東北会場で出された意見は、環境省の有識者会議に報告され、今年の秋には、法案の見直しが行われる予定となっています。