「白神山地におけるエコツーリズムの指針づくり」報告書

「白神山地におけるエコツーリズムの指針づくり」報告書まとまる


1993年(平成5年)、白神山地と屋久島が世界自然遺産に登録されたあたりから、日本では、「エコツーリズム」とか「エコツアー」などという言葉が言われるようになったと記憶する。

時を同じくして1992年には、地球温暖化の防止に世界各国の協力が必要ということで、気候変動枠組条約が採択され、「2000年までに温室効果ガスの排出量を1990年の水準に戻す」という目標のもと、さまざまな取り組みが展開された。

しかしながら、1995年4月にベルリンで行われた第1回締約国会議は、現行の条約内容を不十分とし、新たな国際約束として、先進国における2001年以降の目標や具体的な取り組みを、第3回締約国会議で取りまとめることとなった。地球温暖化防止京都会議はその第3回締約国会議で、1997年に京都で行われた「COOP3」である。私も、環境問題に意識を持ちこの会議に駆けつけ、本会議の開催前にフォーラムを開催したり、地球温暖化防止の為の列島自転車リレーに参加したりした。

この間、青森県においても、白神山地が世界遺産に登録されてから様々な取り組みが展開されてきた。今は「白神山地解説活動連絡協議会」までが立ち上がり、エコツーリズムを支援する取り組みが展開されている。 

こうした中私たちは、世界遺産登録から10年が経過した2003年(平成15年)10月26日、廃校になった鰺ヶ沢町立一ツ森小学校を利活用して、地元の人達の地域づくりを通したエコツアーを推進する事を目的に、ツーリスト達に環境教育・自然体験を実施する団体、「NPO法人白神自然学校一ツ森校」を立ち上げた。このコンセプトは、あくまでも白神山地の環境保全と地域づくりのためには、「白神山地のエコツーリズム」を推進すべきであるという所にあった。

そして翌年(平成16年)、青森県が進めている「青い森ファンド」(公益信託県ボランティア基金)に申し込みし、「白神山地におけるエコツーリズムの指針づくり事業」を3年計画で推進してきた。今回、白神山地を訪れた方々と、青森県側の白神周辺町村である西目屋村・深浦町・鯵ヶ沢町の住民の方々から、貴重な意見を取りまとめた報告書を作成でき、この資料が、今後白神山地で展開されるエコツーリズムのための様々な活動の手引きとなり、白神山地を訪れる方々への自然体験や環境保全活動の推進、並びに地域の人々の自然遺産に対する意識の変革、さらには、地域づくり・地域経済の振興につながり、持続可能な社会のよりよい形でのエコツーリズムが推進されることを期待している。


白神自然学校一ツ森校   代表理事 永井 雄人