6月24日(日)、奥赤石川林道沿いの国有林において、約160人の参加者のもと、第11回目の植樹祭「白神山地ブナ植樹フェスタin赤石川」が行われました。
今回の植林地は、昨年の植林地とは違って急斜面が多く、参加者は片足を力強く踏ん張って一本一本落葉広葉樹を植林してくれました。
植林した樹種は、ブナ・ミズナラ・イタヤカエデの3種類です。
開会セレモニーでは、実行委員長の永井雄人が挨拶に立ちました。
永井雄人の挨拶は、下記のとおりです。
全国からお集まりいただき、第11回植樹祭「白神山地ブナ植樹フェスタin赤石川」にご参加いただき大変にありがとうございます。
今年は、1972年に世界遺産登録制度が発足してから、満40周年の年になります。秋には、京都で記念国際会議が開催される予定になっております。また、白神山地も屋久島共々1993年に世界自然遺産登録されて19年目です。明年は20周年という佳節を迎えます。
昨年は「国際森林年」ということで、東北森林管理局長さんをはじめ、横浜国立大学名誉教授の宮脇昭先生をお呼びし、盛大に「国際森林年記念シンポジウム」を開催し、その意義を留めました。その宮脇先生は、7月15日(日)平内町で開催の高温障害からホタテを守る植樹祭「陸奥湾の山と海をつなぐ植樹祭」にも参加されます。みなさん、受付にチラシを用意してありますので、時間がとれる方はご参加ください。
さて、私どもNPO法人白神山地を守る会は、「白神山地のブナの森の復元・再生活動」が会のミッションになっております。以前からも「世界自然遺産の白神山地の森で、なぜ植林なのか」という方もいましたが、過去に植えられたスギを徐間伐することにより、成長力を維持し、そこに広葉樹を植えて混合林をつくることにより、生物多様性が保たれるというのが科学的知見であります。津軽藩は、この白神山地の森の木を、エネルギー源の確保に利用してきました。核心部分以外の周辺部は、ブナの二次林としてすばらしい森を形成しています。
第9回まで植林してきた津軽沢林道の植林地は現在、自然界といいバランスで成長をしつつあります。ここでは今、カモシカが発見されたり、ウサギの糞もみられます。また、クマゲラに似たドラミングも聞こえており、豊かな生態系が蘇りつつあるように思われます。
また6月3日は、友人でもある、気仙沼市の「NPO法人森は海の恋人」の畠山重篤理事長を訪ね、植林をして参りました。昨年、畠山理事長と林野庁の末松林政部長、ヒラメの研究者として有名な田中克先生が白神山地を歩き、この植林地の前を流れる赤石川の水分分析を行いました。畠山理事長は、フルボ酸鉄分が一関市のひこばえの森よりすごく多いと感動していました。田中先生も、これは植物プランクトンがたくさん海に行き、ヒラメやハタハタがたくさん捕れる、と言っていました。今、鰺ヶ沢町が「ヒラメ丼」を町の名物として販売していますが、これは科学的根拠があって実施していることなのです。
もう一つ、気候変動、地球温暖化防止と共に大切な条約に、生物多様性条約があります。あまり難しい話はしませんが、一つだけ言えば、日本の自然を特徴づけるには、広大な豊かな森と豊かな海という多様性がなければなりません。それをつなぐのは「河川」です。つまり「赤石川」です。
そしてもう一つは、私たちが住んでいる里を介して森と海がつながっています。それは、「水」によってつながっています。その水は、日本海の乾燥した偏西風の風と太平洋高気圧によって交じり合い、対馬暖流の湿気が蒸発して雨や雪となって森に戻ってきます。この循環というめぐりあわせによって、私たちは生かされているといっても過言ではありません。
今までの森・川・海という、森林で涵養された水が、川を通じて海に行くという一方通行の考え方から、川で生まれたサケが海で育ち、また里を豊かにするという双方向を考えていくという視点の研究が進むようになってきました。この考え方が、里山・里海という考え方でもあります。
今回の植樹祭は、積水ハウスさん、モリタカバンさん、キャノンさんはじめ、多くの企業のみなさんが参加していますが、日本経団連がつくった「経団連自然保護基金」のご支援もいただいております。経団連の生物多様性宣言の中に、「NPOと協力して地域特有の環境を守る活動への参加」という項目があります。また「里山の保全」という項目もあります。
資源循環型の取り組みとして、「地域における古紙回収システムの構築」とあります。これは、地元鰺ヶ沢町にある「マエダストア」に新聞紙や段ボールを持参すると、「古本銀行」があり、資源が有効活用されるシステムになっています。白神自然学校では、皆様から古本を集めていますので、みなさん協力して下さい。最後に「間伐材や木くずの利用」という項目があります。
モリタカバン(秋田市)のみなさん
(株)ルネサス北日本セミコンダクタ津軽工場とキヤノンプレシジョン(株)のみなさん
私たちは今年の9月、新しい取り組みとして、津軽半島をフィールドにした「津軽環境半島学」を立ち上げます。これは全国の半島研究者が津軽半島に集まり、岩木川流域や里山・里海・木質バイオマスの可能性を研究・調査をし地域再生プランを作っていくものです。地方の自立の先取りです。
また6月28日には、環境省の南川事務次官を青森中央学院大学にお呼びし、「いだわしいシンポジウム」の開催を予定しています。ここでは、環境省が考える生物多様性の取り組みの説明があります。
国会は「やれ消費税だ」とかやっていますが、今日本は環境保全をどうするかという大切な法律が、うやむやの中決まろうとしていますが、今日は、森林浴を楽しみながら、いい汗をかいて行ってください。地元のお母さんたちの手作りの味も楽しんで行ってください。本当にありがとうございます。
最後に、環境省が推奨する、経団連に事務局がある「生物多様性民間参画パートナーシップ」に、今年から当会も名を連ねました。
またこの植樹祭は、環境省の地球温暖化防止活動を進める地域協議会として今年登録されましたことを報告して、私からの挨拶を終わります。
実行委員長の挨拶のあと、青森県自然保護課 前澤豊利課長、津軽森林管理署 野口浩司署長、モリタカバン 盛田副社長からご挨拶がありました。その後、NICEの堀米リーダーから植林指導があり、開会セレモニーは終了。植林作業に入りました。
青森県自然保護課 前澤課長のご挨拶 津軽森林管理署 野口署長のご挨拶
モリタカバン 盛田副社長のご挨拶 国際ボランティアNICEの堀米リーダー
国際色豊かなNICEのメンバー いつも司会が上手な奥村潮理事
今回の特徴としては、青森中央学院大学・鰺ヶ沢高校の生徒のほか、モリタカバンさん・積水ハウスさん・キャノンプレシジョンさん・ルネサス北日本セミコンダクタさんなどの企業参加が多かったのも特徴だと思います。
ご参加のみなさん、大変にありがとうございました。来年は、世界遺産登録20周年です。引き続きご支援のほど、よろしくお願いします。
青森中央学院大学のみなさん 参加者みなさんで記念撮影
鰺ヶ沢高校の生徒さん スタッフ全員で参加者をお見送りしました
植樹後の食事風景 〜おにぎりと白神汁〜
植樹祭前日の作業風景
NICEメンバーとの夜の交流会風景
地元の食材を使った豪華な食事
さて、この2組は何の歌を歌ったのでしょうか??
■植樹祭の様子を毎日新聞社が記事にして下さいました■
【6/25付毎日新聞(PDF)】
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