活動概念について  
 
  27区間の指定ルート  
 


確かに27ルートが指定ルートとして指定され保護されたお陰で、ある意味では、約17000haの世界遺産が守られているという現実もある。

しかし、このような保護は「人と自然のかかわりや地元住民、マタギ文化をシャットアウトしての保護」であり、世界遺産登録の根底にある「人と自然のかかわりを大切する」という意識のもとに誰がこの遺産を守るか、ということについては、そこに住んでいる住民が無視された形では考えられない。

この27ルートは、地元の山棲み人や山を知っている人でも、険しいルートで簡単には入れない、と言う。ましてや、一般の人に公のルートとして提示することはナンセンスだと言っている。原則規制、入りたい人は挑戦しろ、と言わんばかりである。

白神の中の一部には、県立自然公園や町の共有林野もあり、漁業組合の人達や一般市民が林道を使って入るにしても、ゲートは鍵がかかっており、途中まででも奥赤石川林道を車で入ることはできない。

今のところ、地元ではシャケが川を遡上しなくなったと嘆いているが、山の水は流れているので地元住民からそれほど文句がでていない。しかし、もし水が本当に枯渇しそうになったら、何と言うのだろうと思う。その時に自由に入山できなくて、ブナを植樹できなかったからだなどと嘆いても手遅れである。今こそ、この27ルートにまつわる白神の自然保護と共生という問題、地元住民との山との関わりを話し合わなくてはいけないと思う。


今まで白神山地が守られてきたのは、あまりにも奥深い山のために、誰も簡単に入れなかった、というのが理由のひとつにあげることができる。従って、変な規制するというよりも、入山の際の注意事項を徹底し、入山の条件を充実させるべきである。地元住民を排除した形の今の入山規制は、あくまでも試験的なものであり、早期の見直しが必要である。

マタギをはじめ地元住民は、伝えられてきた文化を守り、自然の恵みに対して節度ある入山をしてきた。そういう意味では、ある程度の過疎対策としての白神山地の有効活用は、限度内において必要であると思う。

1990年、白神山地が林野庁の白神山地森林生態系地域に指定される前までは、白神山地では、ブナの伐採が行われ、伐採されたブナは、家具・玩具の材料やチップになっていった。こうして、白神の山はどんどん裸山になっていった。

裸山になっていった場所は、バッファー部分であり、その他、秋田県八森町の青秋林道周辺道路における90%のブナが伐採された。青森県側は旧弘西林道周辺一帯の森と、その林道から伸びる小さな林道の奥山が伐採され、現在もチェーンソーの音が聞こえている。かなりの量のブナが、毎年伐採されているとしかいいようがない。


秋田県八森町では、民謡である秋田音頭の中の節に「八森ハタハタ、男鹿に男鹿ブリコ(ブリコというのはハタハタの卵)」と唄われるぐらいハタハタが捕れたが、今は海の磯焼けがおこり、バクテリアが発生しなくなっている。、そのバクテリアを食べるハタハタがいなくなり、捕れなくなった。また、秋田沖では、コンブなどの海藻に必要な鉄イオンが白神山のブナの広葉樹から川へ栄養素を含んで流れていた。しかし、ウニなどの藻食動物による過剰な摂食が海藻の衰退を招き、大型海藻群落が失われ、海の中が白くなってしまっている。農業も漁業も、豊富な栄養素を含んだブナの水が大切なことがようやくわかってきた。

日本山岳会青森県支部は、「白神山地・森の復興再生事業」としてブナの植林を行っている。八森町でも、民間ボランテイア団体が、ブナの実を拾い、種を蒔き、苗木の育成を始めている。

白神山地を守る会においても、2000年のブナの実の大豊作で、多くのブナの種子を拾った。この種子を実生や苗木に育て、白神DNAのブナを植林しようと計画を立てている。