今の27区間の指定ルートは保護優先で、世界遺産になったおかげで、山に入りにくくなった、というのが地元住民の大まかな意見である。また、これに対して、地元住民とは、どこまでの範囲の人のことを言うのか、という意見もある。
しかし、白神山地にはマタギという文化が厳然とあり、伝統的に山を利用してきた人達を蚊帳の外に置いていたのではまずいという議論もある。また、人と自然とのかかわり無しに自然を守ることはできないし、人とのかかわりを考えるのが世界遺産の精神ではないかという議論もある。
余談になるが、マタギという語源に定説はないが、サンスクリット語で、「と殺する」という意味からきている言葉と聞く。よく日本では熊撃ちと勘違いされるが、マタギは、祠祭者として、猟をした後は儀式をしている。それが仏教からきているのではとも言われている。
白神では、熊撃ち、山菜採りが中心としてある。「ブナ」いう文字を漢字で表すと、「木」へんに「無」(木では無い)と書く・・・「橅」。しかし、白神ではブナの木を利用した炭焼きが盛んで、家具や玩具にも使われてきた。また、最近では薫製の技術がよくなってきているし、チップとしても使われている。
その他、山菜はお土産に加工され、特産品として販売されている。ブナの木にはえるキノコなどは、マイタケや天然ナメコなどが有名である。また、地元の民宿、旅館などには、全国から四季折々の山の恵みの味を求め、多くの人々が訪れる。
絶滅危惧種のイヌワシについては、生息を脅かす問題があった。北朝鮮から日本に向けられたテポドンというミサイルが発射されてから、米軍三沢基地からの戦闘機の往来が激しくなった。この米軍機の低空飛行が白神上空で行なわれ、イヌワシ・クマゲラ・オオタカの生息や営巣に悪影響を及ぼしている。
最近では、イヌワシの繁殖が確認されなくなったという情報もある。また、鰺ヶ沢町には、スキー場拡張工事計画が持ち出されているが、このスキー場の拡張工事場所の先には、オオタカの営巣が確認されている。また、西目屋村の津軽ダム拡張計画の為に、国土交通省が自主的に調べた調査結果においても、オオタカの営巣が4ヶ所発見された。このように、白神は全国的にも貴重な動植物の繁殖地となっている。
今、あらためて地元住民の意見も聞き入れながら、白神山地の入山問題と自然保護を議論するべき時がきているのではないだろうか。
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