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           真鍋前環境庁長官は、「27区間の指定ルートは試験的な入山方法であり、環境や状況によっては見直し作業を行う」と白神に出かけて表明した。 
           
          この世界遺産の論議は、ただ入山問題を議論するのではなく、なぜ、青秋林道を止めたのかという地元住民の思いを原点として、その経過から議論すべきであると考える。そのことが、保護運動の根底になくてはならないことだと思う。 
          オーバーユース、総量規制問題は絶えず出てくる議論ではある。しかし、基本的には、白神山地が今まで通りの自然循環型の森であることが大切であり、エンドレスゲームのような議論を繰り返さないことである。今後は、山を知らない人達にはインタープリティーションを実施し、世界遺産白神山地の魅力を世界に発信していくべきであると考えている。そのためには、ボランティアガイドとしてのエコロジーの白神ガイドやインタープリターを養成していく必要がある。 
          私たちは、今までに約1200人の一般市民の人達をガイドしてきた。ガイドの内容としては、以下のようなことがあげられる。 
          1.白神山地がなぜ世界遺産になったのか、 
            その経緯や原生的なブナ林の案内 
          2.ブナの種子、樹皮の説明 
          3.根元の腐葉土が堆積した地層の状態の案内 
          4.地形の特長やそこにおける植生、植物の紹介 
          5.水生昆虫の調査をし、水のきれいさの認識 
          6.天然記念物のクマゲラというキツツキ科の鳥の巣穴の紹介 
          7.ブナ林の中のワンターリングという歩き方の推奨 
          白神山地と同時に世界遺産登録された屋久島は、屋久杉があったり、島のために周りが海である。これに対して、白神山地にはブナ林しかないが、森林浴を通し、セラピーなどの心の癒しも感じてもらいたいと思い、何も考えず、森の中をゆっくり歩くということを進めている。 
           
          日本人は、目標に向かって進むという登山型の山のかかわりは知っているが、森や林をゆっくり歩くという感覚はあまり知らない。とにかく忙しく森の中を通り抜けるという歩き方をする。 
           
          森の中の歩き方については、あちこちから反省の声が多い。ツアーの途中、キノコなどを見つけて採ろうとする参加者がいるが、その採り方が根こそぎなので注意をする。「山の花は採らない。残すのは足跡だけ」とよく言う。参加者は、世界遺産に指定された理由がよくわかった、またもう一度来てみたい、巨大なブナ林が魅力的だった、などという感想を持つ。 
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