ブナの植林地紹介  
 
  当会の植林に対する考え方  
 


2001年5月、環境庁東北地区自然保護事務所は、白神山地世界遺産地域周辺の主な登山道入口で入山者数を集計し、入山者の数を発表した。
2000年は約12万人の入山者があり、白神山地の環境影響への人的影響などを検討する基礎データを得るために参考にしたいとしている。

 2001年も、白神山地は春の
 新緑と秋の紅葉時期は大勢の訪
 問者で賑わっている。
 特に青森県西目屋村の暗門の滝
 入口と秋田県藤里町の岳代が最
 多である。大型バスが駐車場に
 所狭しと並び、訪問者によって
 捨てられるゴミの量はゴミ箱か
 らはみ出すくらいになり、トイ
 レの臭いは行楽地と何ら変わり
 がない。
 青森県は2001年10月「白
 神憲章」を策定し、盛大なフォ
 ーラムを開催した。ボランティ
 アの服装を有名なデザイナーに
 依頼し、この憲章を持って白神
 山地を保全し、後生によりよい
 形で継承したいとしている。
暗門の滝(第1の滝)


しかし、白神山地を取り巻く最近の状況は今まで述べた通りに森を守るとか、森の復元をしていこうというよりは、世界遺産というブランド名を利用したカネ儲けの話ばかりである。地域振興とか活性化と言って箱ものを作り、原生的な白神山地ツアーと言って暗門の滝の散策コースのコンクリートの上を歩いただけで大型バスで乗り付けるなど、無茶苦茶なことをしている。ツアーの参加者がたまたま道端で会って「どこが世界遺産ですか」と聞いてくるほど、過大広告とそのいい加減さには目を覆うばかりである。

かつて森の伐採を企んだ人達までもが自然保護を叫んでいる。残念ながらこの白神山地の森が、世界遺産になって残ったとしても、いまだ入会権を持っている地元住民の入山も自由に認められていない状況である。このように、森と人との関係を断ち切った形で残されているということは、死に体の状況と等しいと思う。その森を世界遺産というブランド名にひかれて多くの方が訪れる。これが白神山地の今日の実態である。

もう一つ白神山地の地元住民は、
今、水面下で白神の核心部分を
源流とする追良瀬川・赤石川の
ダム水利権の更新で巡り揺れて
いる。その脱ダム宣言の意向は
「自然環境を守るため」という
理由からである。ダムの下流に
なる追良瀬川、赤石川、笹内川
は干上がった状態で、有名な金
アユは小柄で、昔はサケ・サク
ラマスが多く捕れた川だが、今
は漁獲量が少ない。

しかし、首長はもろ手を挙げてすんなり反対とはいかない。それは電力会社から多額の交付金を受けているからである。また、もう一方の津軽ダム(目屋ダム)は川原平と砂子瀬という目屋またぎの発祥地で、この二つの部落は今、新津軽ダム建設のため湖底に沈む計画が決定している。今、住民は戦後二度の住民移転を迫られ、散り散りバラバラとなろうとしている。また、白神山地の緩衝地帯の外側はブナの森が伐採され、スギが植林され荒れ放題になっている。

このように、白神山地の周辺は観光客の行楽とは裏腹に病んでいる。私たちはこんな白神山地を守るべく昨年のブナの種が大豊作の年に、ブナの種を拾い、実生から育て苗木にして、白神の森に植林する事業を始めた。特に、青秋林道の舞台となった赤石川の上流には来年度から本格的に、「天然記念物クマゲラの棲むブナの森の復元事業」を赤石川流域の人達と連携し始める予定でいる。全国から訪れる観光客のエネルギーを森の復元に活かし、創造的観光に向けさせたいと考えている。多くの方々のエネルギーをボランティアとして発揮できたら健全な自然保護の精神が戻ってくると思っている。

 
  WWFの「白神山地フィールドツアー」     「秋の白神山地エコロジー体験ツアー」
     参加者による植樹(2001.9.23)         参加者による植樹(2001.10.6)