ブナの成長記録
白神山地における自然保護運動を進めるためには、
ブナの復元再生を通した地域振興しかない


白神山地は豊饒の秋を迎え、動植物が、ヤマブドウ、トチの実、ブナの種子をほうばっている。これから向かう厳しい冬支度である。

本来は6〜7年周期でしか実をつけないブナが今年、2000年に引き続き3年目にして種をつけているので、私たちもその採種に奔走する毎日である。そして、今年の秋には、この種を蒔く作業がある。

私たちは、「白神山地の自然保護運動の原点は何か」ということを、世界遺産に登録された趣旨からも、長く考えてきた。この「進行しつつある地質学的経過、生物学的進化及び人類の自然環境との相互作用を示す見本として顕著であるところ」の箇所が重くのしかかる。つまり、この広大な17,000haの見本をどう次の世代に残存していくか。また、そのためにどういう手法が一番環境にも配慮し、地元の伝統文化も継承し、地元の健全な地域振興や経済効果も考えた形で納得いく方法になるのか、深く考えてきました。その結果、私たちは、白神山地を青秋林道建設計画から守った、異議意見書を提出した人々との何らかの関わりを持つことが、世界遺産の趣旨からいっても適切な自然保護運動の回答が得られるのではと思うようになっていった。

そして、2001年の春から鰺ヶ沢町の大然部落と一ツ森部落に通い、白神山地を守る会の事務所を構え、この赤石川上流部の伐採された広葉樹とブナの森を共々に復元再生する活動を展開しようとしている。そのために、国有林の地主である森林管理署鰺ヶ沢事務所に何度も足を運び、緩衝地帯の外側の国有林に植林する活動を提案した。また同時に、赤石川流域の内水面漁協組合にも話をし、漁協関係者にも賛成をしてもらった。

こうして私たちは、何度も山に入り、植林地を探し、ようやく、2001年に植林地を特定し、森林管理署鰺ヶ沢事務所から約3ha(津軽沢林道の奥山)を植林地として使用しても良いという承諾を得た。